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23. 欲しいもの、憧れるものをよく見ていたい

執筆者の写真: Yasuko KasakiYasuko Kasaki

これが欲しい、と思うとき、それはすなわち、「ああ、自分はこんなものを持っていたんだな」と気づくときです。こんなふうになりたい、と思うとき、それはすなわち、「ああ、それが本来の自分だったんだ。忘れてた」と気づくときです。

だから、欲しいもの、憧れるものをよく見ていたい、と思います。いつも、よく見て、素敵なものを見分ける感覚を磨きたいと思います。表面的な華美な美しさに惑わされるのではなく、深みのある、心のこもった美しさを感じられるようになりたいと思います。なぜなら、表面的な華美にひかれても、そこから引き出される自分が、満足できないからです。 わたしは美しい食器が好きですけれども、見て歩いて探して集める、という趣味を持つ暇がありません。収集家の友だちの食卓に招かれると、さすがね、とため息が出ます。見る目がやはり、違います。鍛えられています。 異性を見る目、も同じでしょう。素敵ね、と惚れ惚れするのは、その人のどこなのでしょうか。その人の、ほんとうの部分を見たいと思います。  そうやって、自分を知っていくことが、人生の目的だ、と言ってもいいのではないかと思うのです。相手を見て、よく見て、自分に気づく、気づいた自分を使ってみて、自分を知るということが。  好きでないもの、好ましくないものを眺めている暇はないのです。同様に、自分のなかの、好きになれないところ、イヤだなと感じるところ、劣等感、思い出したくない記憶、等々にも、注目している暇はありません。それは、自分のダメなところを棚に上げる、ということとは違います。自分の好ましいところに意識を向け、それを使い、磨いている間は、ダメなところ、が顔を出すスペースはなくなるのです。  素敵な人や食器、公園の花々、明け方の窓の向こうにそびえる、雪をいただいた山などに見取れているとき、その可憐さ、多彩さ、荘厳さに心うばわれ、つまり自分の心のなかに存在する可憐さ、多彩さ、荘厳さをしみじみと感じとっている、その最中に、さびしがりやの自分とか、怠けものの自分とか、ずるがしこい自分とか、罪悪感にさいなまれている自分が顔を出す余裕があるでしょうか。 カリブ海に浮かぶ島に、白亜の豪邸が建っている映像がテレビの画面に映し出されます。うっとりとします。そうしたら、しばらく、うっとりその画面を見つめていましょう。うっとりとする、その真の理由がわかってきます。南の島にある夏の家、そこには、自由の感覚、健康感、余裕、安定感、あらゆる生命がのびのびと生を謳歌している感じ、などがありますよね。そのテレビの映像は、そういう感覚、自分のなかにあり、もっと経験したい、もっと実現したい、もっと分かち合いたいと願っている感覚を、経験させてくれているのです。わたしたちは、少なくともこのとき、自意識を抜け出しています。ダメな自分、収入のない自分、怠け者の自分、というものと、闘っていません。そうではなく、自由や健康や美しさ、といった、自分を見ています。その経験に感謝して、たっぷりひたってみることで、その感覚は大きくなり、シャープになり、日常の別の場所でも現れるようになります。 島の豪邸をひとめ見て、自分とは関係ない人生だわ、とか、そんなものに見取れてないで、働かなきゃ、アパートの家賃を払わなくちゃならないんですもの、などとスイッチを切ってしまうと、かけがえのない経験を失います。せっかくのヒントを無駄にしてしまいます。好きなもの、憧れの人を、真面目に、誠実に、まっすぐと、見ていたいです。そんな体験を積み重ねていくと、人生に、どんどん好きなものが増えてきて、その上、自分を取り囲んでいる好きなものはすべて、自分自身なんだということが実感されてくるからです。それ以上の喜びは、ないのではないかと思っています。


(初出誌 Linque Vol.24 発行:国際美容連盟2009年4月)

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