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66. 効率を求める方法では遅すぎます。

外に出ると、路上はサンタだらけ。近所のバーの周りにサンタがどっさり。徒党を組んで歩いているサンタは、バーからバーへハシゴしていて。まだお昼なのにもう酔っ払ってフラフラしているサンタも少なからず。無理もありません、飲み始めるのは午前10時半なのだから。 毎年12月に行われるサンタコン。アメリカのたくさんの都市、ヨーロッパやアジアのいくつかの都市で同じ日に大勢の真っ赤なサンタが溢れ出します。90年代の半ばに始まったという、ただひたすらバカバカしくて最高に楽しく(当事者にとっては)また、ただひたすらにバカバカしくてちょっと迷惑(周囲にとっては)催し、ニューヨークでは年々規模が大きくなっているように感じるのですが、日本に伝播するのも時間の問題でしょうか。 時間と言えば、今まで長い間(昭和時代も平成時代も)「いかに時間を効率よく使うか」ということに焦点が当てられてきました。そんな中で、効率の良さを追求していると、地球環境も体内環境も破壊されてくると気づいて、スローライフ、フローフードなどが提唱されもしました。 それでもやはりこの世にあふれているのは、「〇〇が手に入りますように!」「△△が変わりますように!」「xxが増えますように!」などといった無限の願望です。 願望と時間にどんな関係があるのでしょうか? 大アリです! 時間が限られている、というコンセプトがなければ、願望は生まれないからです。もし人生が、延々と、永遠に続いていくものなら、早く結婚しなくちゃとか、早く十倍稼げるようになって家を建てたいとか、きれいになって人に認めてもらいたい好かれたい、その他さまざまな思い/切実な思い/悲痛な思いを持つ理由は綺麗さっぱりなくなります。 人生が延々と続くにしても、限られた短い期間であるにしても、どちらにしても今すぐお金が要るのだ、と言うかもしれませんが、限られているという基本的な概念があるからこそ、今どうしてもこれが欲しい、あれも必要、とあれこれが浮かんでくるし、そうしたすべてが、「心配事」になってしまうのです。「心配事」は、そして、心配に限らず、重く深刻な思いや感情がそこに被さると、あらゆる物事は、そこで凍りついてしまい、流れていかなくなるのです。凍りついたものは「問題」という物体となって、そこに立ちはだかります。 ではどうしたらいいのか? どうやって人生をスムースに勧められるのか? お金やその他がふんだんに流れ込み、また流れ出ていくようにする方法はあるのか? 時間とは何かという哲学的設問に取り組むのは後回しでいいにしても、「時間が限られているという概念が人生の流れを澱ませてしまっているようだ」という事実を認めてみたらどうでしょうか。 限られた時間内で、できるだけ早く欲しいものを実現させなければ、だから効率の良さを求めるほかない、できれば「三週間で願いが叶う」いえいえ「三日で願いが叶う」方法を探したい、となると、探しているうちに気がつけば何年も過ぎてしまいます。 つまり、効率の良さを求めて、「早く、早く、一刻も早く!」と前のめりになっていると、結果的に、とんでもなく効率の悪い日々を過ごす羽目になってしまうということを理解して認めるのです。 そんなに効率の良さを求めるなら、生まれたらすぐ死ねばいいのだ、と言った人がいますが、膝を叩きたくなるとはこのことですね。 もう、そのような無駄をしている暇はない、と決めませんか。万が一、調子よく進んで、10年かかりそうだったことが5年で達成できたとしても、5年が消費されています。しかも、5年で達成したのは、無数にある願望のほんの一部であって、まだまだ追いかけなければならないテーマが控えているのです。そんな、プレッシャーと「まだできていない」という自分へのダメ出しでいっぱいの心を抱える生き方をやめて、“今すぐ” 晴れやかな心で生きる、ということをスタートさせたらどうでしょうか。 時間はたっぷりあるどころか、永遠に生命が続く、と想像してみるのです。今すぐやらなければならないことはないのです。だから、何の役にも立たないだろう愉しみを、周りにあるもの、周りにいる人たちと、存分に味わってみましょう。 頂きもののバスオイルでバスタイムを満喫しましょう。その人と、ベンチに腰を下ろして缶コーヒーでも飲みましょう。花を買う代わりに公園の水仙を眺めましょう。今まで組み合わせることを思いつかなかったセーターとスカートを着て楽しみましょう。夕食は玉子がけご飯で済ませ、しかもお代わりもしてしまいましょう。美味しいですものね! そこで罪悪感を持つ理由はどこにもありません。 そうして、一切の焦りや計算、罪悪感を取り払った時間に感謝して、「明日もまた」と思いながら眠りにつきましょう。活力はそうやって作られます。その活力が、自ら新しい人生風景を連れてきてくれます。 効率を求め、あちこちを奔走し、自分にダメ出しと命令を下しながら生きる時代は終わりました。もうそんなことをしている余裕はないのです。逆説的ですが、時間は限られている、などと生半可なことを言っている場合ではなく、時間はもうない、だから永遠の価値だけを生きる、と心得たいのです。1人の心のリセットは、あっという間に周囲に伝播します。サンタコンの広がりなどよりずっと速く。超高速で。是非それを目撃しましょう。


( 初出誌 Linque Vol. 67 発行 : 国際美容連盟 2020年1月)



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