54. 依存ではなく、信頼を育てたい
- Yasuko Kasaki
- 2017年1月20日
- 読了時間: 4分
マンハッタンのダウンタウンにある広場、ユニオンスクエア。フラットアイアン、チェルシー、グラマシー、ブロードウェイ、パークアヴェニューに囲まれ、マンハッタンのお隣のブルックリンやニュージャージーに出る地下鉄も通っているターミナル駅があり、週に三回出るファーマーズ・マーケットには、遠くからも大勢の人が訪れて賑わいます。 わたしは、30年近くなるニューヨーク生活を、ずっとこの地域の周辺で暮らしてきました。ファーマーズ・マーケットの真ん前に住んでいたこともあります。 ユニオンスクエアは、歴史が長く、昔々は、ティファニーが店を開いていた時期もあったそうです。歴史文化財に指定されてもいます。ドラッグが売買され、危険地区とされていたこともありますし、デモ抗議行動の中心であったことも。学生も含めた若者が集まるこの公園には、今も、ことあるごとに皆が結集します。ヘルシー食品の巨大スーパーマーケット、ホールフーズのニューヨーク一号店もここにあります。 わたしたちのヒーリング・センターCRSは、その南側に位置しているのですが、北側には、数年前にディーパック・チョプラ・センターが移ってきました。その間には、ジバムクティ・ヨガセンターをはじめとして有名なヨガスタジオがいくつもあり、また、公園周辺のビルのなかには、セラピスト、ボディワーカーのオフィスが数え切れないほど入っています。徒歩10分以内のところにこれだけ“ヒーリング”が結集していて、食料も日用品も安全なものが賄えて、しかもディスカウントデパートまであるので、わたしの生活は、この、徒歩10分の範囲内にすべて収まってしまっています。 チョプラ・センターは、夢見るように素敵なものだけを売っているABCカーペットというお店のなかにあって、お洒落で洗練されたスペースです。そこに、チョプラ氏ご自身もしょっちゅういらっしゃって、サットサンをしたりします。先日は、『奇跡のコース』のティーチャー、マリアンヌ・ウィリアムスンと精神科医のケリー・ブローガンのトークがあり、ちょっとオフィスを抜け出して行ってきました。客数約200、同業者やヒーラーが大勢、スクリーンで見るセレブの姿もちらほらありました。マリアンヌとケリーの社会的認知度の高さと支持者の多さがうかがえます。 ケリーは、「精神病は存在しない」と言い切ります。長年、精神科医として、数え切れないほどの薬を処方してきた彼女は、自身の病の経験を通して、どんな“疾患”でも、薬なしで回復するということを学び、患者との多くのケースで証明するようになりました。「うつ病もですか?」はい。「統合失調症もですか?」はい。「分裂症もですか?」はい。「双極性障害もですか?」はい。「依存症もですか?」はい。 「それは食事療法によってですか?」含まれます。「運動なども?」含まれます。「どんな食事ですか? やはりパレオ・ダイエットですか?」ご自身と対話してください。どんな情報も、鵜呑みにしではなりません。試して、自分の声を聞いてください。 ここがポイントなのですね。 情報に頼るという行為は、自分にはない力を、その情報に見る、ということなので、そのようなことをすればするほど、自信喪失し、自分の声を聞き取れなくなります。つまり、直感力がますます鈍ってしまいます。 彼女が「一ヶ月間、自分を大事にしてみてください」と言ったとき、会場に笑いが起きましたが、それは、「一ヶ月もの間、自分を大事にしたことなんかない」という事実を突きつけられた笑いでしょう。 自分を大事にするとは、食事をするときのひとくち、ひとくちをほんとうに味わう、感じる、ということであったり、洗剤を安全なものに変える、ということであったり、住まいから不要な匂いを取り除くことであったり、普通のことの積み重ねです。そのひとつひとつを、「これに変えればいいのねっ」ではなく、「こうするほうが気持ちいい」と感じながらすること、そして、“ネガティブな”感情や思いをも、「ああこんなふうに感じてるな」と責めずにやさしく認めることです。 「一ヶ月それをやったら違いは明白になりますよ」とケリー。「それでもやっぱり処方薬の助けがあるほうがいい場合もあるよなあ」と、わたしの隣にいた精神科医。わたしは彼の意見にも賛成です。 『奇跡のコース』では、精神の病だけでなく、「身体が病気になるわけがない」と教えます。病を見るのは、心がそれを選択しているからであり、心の訂正によって病は消えるはずなのです。そして心の訂正とは、つねに、「闘いを挑む姿勢から、自分を完全に受け入れ、穏やかな心に戻る」ことです。だから、病気になったら、「どうしたらいいのっ?」ではなく、「落ち着こう。たとえ病気でもわたしはわたしだから」と考えましょう。もちろん、そうするためにも、医学の助けを借りたいことは、多々あると思います。 何をするにしても、助けは、できるだけ求めたいです。助けてもらってすることには、感謝が生まれるから、そして、感謝は、受け入れて穏やかになる道のひとつだからです。 同時に、何をするときでも、自分の声=直感=魂が放っているメッセージをこそ頼るということを忘れないでいたいです。 それだけが、依存ではなく信頼を育てる道だと思っています。
( 初出誌 Linque Vol. 55 発行 : 国際美容連盟 2017年1月20日 )
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