この夏お会いした大勢の方々、特に二十代、三十代の若い方々から学んだことは少なくありませんが、ひとつ大きな気づきがありました。 「愛のないエネルギーは増えない」というのはほんとうだな、ということです。 例をあげてみます。 ある三十代の女性は、ファッション・デザイナーとして数年のキャリアがあるのですが、短い期間でいくつもの会社を転々とし、いつもお金に困っています。日本のアパレルの会社を二十代半ばでやめて、ニューヨークの大学で勉強するというあっぱれな準備をしてきたにも関わらず、どこにお勤めしても“しっくりこない”か、何か辞めざるを得ない事態が発生するのです。落ち着いてじっくりひとつの仕事に取り組むという機会を持っていないので、キャリアを積み上げていくということができず、したがって、お給料も低いままです。 一方、まだ二十代の女性は、ブティックでアルバイトをしているのですが、ファッションが大好きで、買い付けのお手伝いをしたり、自分が着たい服を縫ったりしているうち、バイヤーとして、デザイナーとして、小さな仕事が次々入ってくるようになり、現在のところ、先の三十代のデザイナーの三倍ほどの収入を得ています。 しかるべき学校を出て、つまりそれだけの時間とお金を注ぎ込んで頑張っている人よりも、そのような下地を持たない人のほうにお金とチャンスが流れていくとは、いったいどういうことでしょうか。 チャンスの波に乗って仕事をエンジョイしている二十代の女性は、はりきっていますから、忙しい毎日です。お友達と遊びに行く時間も睡眠時間も惜しんで働いています。そして、働けば働くほど、次の面白いプロジェクトがやってくる、というサイクルのなかで生きているのです。「これが好き」というエネルギー、つまり愛のエネルギーがどんどん増えていく、良い一例です。 三十代の女性のほうは、「仕事をゲットしなければ」「よりよい収入を得なければ」「もっと良い環境の職場はないかしら」と、たった今自分に足りないものばかりに気持ちが向けられています。足りないものをなんとかしようとするエネルギーは、愛とは反対で、「これが足りないのはイヤ」という、嫌がるエネルギーと言えます。嫌がるエネルギーには、お金もチャンスもやってきません。 恋も成功も、すべて同じです。お金、成功、恋愛、それらが魅了されるのは、愛のエネルギーだけなのです。 欲しいものがなかなか手に入らずに悩んでいるとしたら、それは愛のエネルギーを使っていないせいかもしれません。欲しいと願うその目的が、間違っているのかもしれません。 正しい目的、すなわちほんとうに自分の魂が求めているものならば、そこには必ず愛がありますから、手に入ります。成就しなければ、それはほんとうの目的に向かっていないと理解して、今一度、自分の心の焦点がどこに向けられているか、確認し直したほうがよいのです。 開かないドアを叩き続け、しまいにはハンマーを使ってドアを壊してしまう。そのように力づくで人生を切り開いていく必要はない、代わりに愛のエネルギーを使えばいい、とわたしたちが認め、いつも実行できるようになると、みんなが成功できるし、また、この世界からハンマーが、闘いが、戦争が、なくなると思います。
(初出誌 Linque Vol.11 発行:国際美容連盟2006年)
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